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第18回 研究テーマ及び受賞者名

『東アジア金融秩序の経済分析―企業ミクロデータからの検証』

永野 護(三菱総合研究所、政策・経済研究センター主任研究員)

<未来の東アジア共同体構想を企業金融面から検証する>

 この度は、第18回大平正芳記念財団「環太平洋学術研究助成費」を賜るという名誉に預かり、平岩外四理事長、大平裕常務理事はじめ、財団ご関係者、また貴重なご研究時間を割き、拙稿にお目通し下さった選考委員諸先生に厚く御礼申し上げます。
 1998年以降、日本政府が東アジアとの二国間交渉を通商金融面で強化し始めた時期に合わせるように、私自身の業務、研究活動も東アジア諸国のマクロ経済・金融分析が大半を占めることとなり、最近2年間においてはその傾向はますます先鋭的となっております。すでにおよそ20年前より、こうした日本の東アジア諸国との関係深化を見通し、環太平洋連帯構想の一環として財団事業を進めて来られた御財団の先駆性には、改めまして敬意を申し上げる次第です。
 現在、自由貿易協定、通貨交換協定といった二国間協定により、日本と東アジア間で進められてきた経済連携は、今後とも深化してゆくことは必然と考えられます。今回、助成の対象となりました私の研究は、こうした東アジア地域における企業システムを金融面から、ミクロ・データを用いて明らかにすることを目的としています。これまで必ずしもデータ整備が万全ではなかった同地域における企業データは、近年、劇的に改善が進んでおり、これまでの先進諸国企業を中心として蓄積された先行研究の応用に、十分に堪えられるまでに発展しています。米国、英国に代表される資本市場を中心とした企業金融秩序、銀行市場に規律付けられる日本型企業金融に加え、本稿では、東アジア諸国それぞれの歴史的・文化的背景により育まれた企業金融システムが、いかなる普遍的特徴を持つのかを明らかにすることを研究目的としています。
 今後において経済連携協定を土台に進められる東アジア共同体構想、またすでに実務的実現可能性が検討されているアジア債券市場は、微視的観点からの研究蓄積を進めることで、一層、その実現可能性を高められるものと考えられます。今回のご助成により、日本と東アジアの経済連携深化に拙稿が研究蓄積の面で貢献できるよう、今後とも精進して参りたいと考えております。

略歴
1966年大阪府生まれ。90年横浜市立大学商学部経済学科卒業。92年早稲田大学大学院商学研究科(金融経済専攻)修士課程終了。同年(株)三菱総合研究所入社。2000年-2001年 アジア開発銀行(本部フィリピン、マニラ)出向。2004年大阪大学大学院国際公共政策科博士後期課程修了。現在(株)三菱総合研究所、政策・経済研究センター主任研究員。
 著書に、“Inter-Regional and Intra-Regional Trade in Post-Crisis Asia: Challenges and Opportunities”, Journal of Economic Integration, Volume 18 Number 1, March 2003、「為替レート変動の非定常性に関する分析」『日本経済研究』No.35, 日本経済研究センター97年12月など。

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