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第23回 研究テーマ及び受賞者

「沖縄と太平洋の島々を結ぶ文学研究ネットワークの構築」

本浜 秀彦(もとはま・ひでひこ)(沖縄キリスト教学院大学人文学部英語コミュニケーション学科准教授)

<太平洋の新しい文学ネットワークの確立に向けて>

この度、大平正芳記念財団「第23回環太平洋学術研究助成費」を受けることになりましたことを、たいへん光栄に思います。私の研究の意義を評価していただいた大平財団の皆様、選選考委員会の諸先生方に、心からお礼を申し上げます。
 私の研究は「沖縄と太平洋の島々を結ぶ文学ネットワークの構築」というテーマで、太平洋文学という新しいジャンルと沖縄の文学表現を結び、ひとつの「運動体」のようなネットワークを構築するための基礎的な作業を行うことを目的にしています。
 太平洋文学は、太平洋の巨大な空間に点在する島々に住む人々が生み出した詩、小説、戯曲などの文学表現で、代表的な作家にアルバート・ウェントや故エペリ・ハウオファらがいます。一方、沖縄の近現代文学であるオキナワ文学は、近代に日本という国家に編入された沖縄の人々が日本語で書いた文学作品です。この二つの文学ジャンルには、いくつかの共通点があり、植民地化された歴史の負荷にこだわるアイデンティティーの表出や、ローカルな言語に代わって押しつけられた言語(日本語、英語、仏語など)から逆照射する島々の文化や社会などを物語にしていることなどです。沖縄の文学作品を、太平洋文学、つまり「島」と「海」の可能性を求める文学から捉え直すことができるのではないか――そう考えたことがこの研究の出発点です
太平洋の英語文学とオキナワ文学を比較、クロス分析することを可能にする環境を整えるための文学ネットワークを構築するためには、調査や資料収集に基づいたテキスト分析や翻訳といった作業に加え、例えばシンポジウムなどの開催といった、太平洋の島々の文学者や研究者との交流も重要になってくると考えています。太平洋の文学ネットワークに接合した沖縄からの文化発信を、太平洋という大海原の、平和のネットワークづくりに結び付けたいという思いを常に持ちながら、本研究に取り組んでいきたいと思います。

略歴
1962年、那覇市生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。新聞記者などを経て、米ペンシルバニア大学大学院アジア・中東学部修士課程、同博士課程で学び、Ph.D.を取得。専門は比較文学、メディア表象論。主な著書にWriting at the Edge(UMI)、共著に『沖縄文学選―日本文学のエッジからの問い』(勉誠出版)、論文に「国家イベントにおける『海』の表象と視覚の政治学」、「オキナワ文学における『太平洋』イメージ」、「手塚治虫のオキナワ表象」などがあり、太平洋文学から映画、マンガまで幅広く論じる。

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