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第23回 研究テーマ及び受賞者

“Is the Chinese Currency Overvalued or Undervalued? -An Empirical Assessment of the Renminbi Equilibrium Exchange Rate and China’s Foreign Exchange Rate Policy”

研究者代表: Zhaoyong Zhang(ジャオヨン・ジャン)
(エディス・コーワン大学准教授)
 
<アジア域内通貨システムの新たな制度設計を目指して>

  この度は、私たちの研究課題「中国元は過大評価か過小評価か?―中国元の均衡為替レートと為替政策に関する実証研究―」を第23回環太平洋学術研究助成費にご選定頂きましたことを、大変光栄に存じます。大平正芳記念財団の環太平洋学術研究助成費が、アジア・太平洋地域の優れた研究を助成の対象とすることは国際的にも広く知られています。今回、私たちがこのような栄誉ある研究助成を受けて中国元の均衡為替レートを研究する機会を頂きますことを、大平正芳記念財団の関係者の皆様、そして選定委員会の先生方に心より御礼を申し上げます。
  周知の通り、1970年代後半から中国は約30年という長期にわたって経済の改革開放を進め、非開放的な途上国から「世界の工場」と呼ばれるほどの貿易大国へと発展してきました。世界貿易における中国の急速な台頭は、貿易相手国との間で数々の貿易摩擦や紛争を引き起こし、近年では、米国を中心とする国々が、中国の人民元が大幅に過小評価された水準にあるという強い懸念を表明しています。この人民元の過小評価によって、中国は輸出面で不当な利益を享受しており、輸入国の製造業部門が深刻な打撃をこうむっている、と主張されています。
  私たちの研究課題の目的は次の3点です。第一に、中国の為替制度の変遷と発展を批判的に検討し、同為替制度の発展がどの段階まで、そしてどれほど急速に進んできたかを分析します。第二に、従来の均衡為替レート決定モデルを大幅に発展させ、中国固有の産業・貿易構造を反映した均衡為替レートの推計を試みます。具体的には、国際産業連関分析の手法を応用し、産業内貿易を通じた中国と日本・その他東アジア諸国との部品・中間財取引の拡大、そしてそれら中間投入財の生産性格差を厳密に反映させて均衡為替レートを推計することを目指します。第三に、新たに推計した均衡為替レートに基づいて、人民元が過大評価されていたのか、それとも過小評価されていたのかという問題を検証し、さらに、中国元の切り上げが中国経済や他の主要貿易相手国にどのような影響を及ぼすかを実証分析によって明らかにする計画です。
  本研究課題は、私たちが過去数年間に取り組んできた東アジア経済統合研究プロジェクトの一環です。環太平洋学術研究助成費によるご支援を頂きながら、私たちの研究を推進し、東アジア経済通貨統合研究に大きく貢献できるよう全力を尽くす所存です。
 
略歴
1991年ルーヴァン・カトリック大学 (ベルギー) においてPh.D. (経済学) を取得。シンガポール国立大学准教授、名古屋商科大学教授を経て、現在、豪エディス・コーワン大学准教授。過去に横浜国立大学、韓国対外経済政策研究院 (KIEP)、(財) 国際東アジア研究センター、南オーストラリア大学、西オーストラリア大学、マカオ大学の客員(准)教授・フェローを歴任。専門は国際貿易、国際金融。東アジア金融危機、東アジア経済通貨統合、中国の為替政策の分野で、Applied Economics, Journal of International Development, the World Development, Japan and the World Economy, Journal of Economic Development, Journal of Economic Integration, Mathematics and Computers in Simulation, Open Economies Review, Asian Economic Journal 等の査読付き国際学術雑誌に数多くの研究論文を発表している。また、国際的に評価の高い2つの査読付学術雑誌、Papers in Regional Science (2003年7月号) とThe World Economy (2006年12月号) のGuest Editorを務め、アジア太平洋における地域経済統合および東アジア経済通貨統合に関する特集号の編集を行った。

 共同研究者:佐藤清隆(さとう・きよたか)(横浜国立大学准教授)

略歴
1991年横浜国立大学経済学部卒業。2001年東京大学大学院経済学研究科より経済学博士号取得。1998-2002年 (財)国際東アジア研究センター研究員を経て、2002年9月より横浜国立大学経済学部助教授、2007年同准教授(現在に至る)。2006年9月よりAsian Economic Journal 編集委員。専門は国際通貨・金融。東アジア通貨統合、輸出企業の価格設定行動、為替レートのパススルーを研究テーマとし、Journal of Money, Credit and Banking, Applied Economics, International Journal of Finance and Economics, Open Economies Review, The World Economy等の英文の査読付き国際学術雑誌に論文を発表。

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