インフォメーション

第29回 研究テーマ及び受賞者

「戦後日中教育文化交流史に関する教育学的研究-大平学校の事例を中心に」

孫 暁英(ソン・シャオイン)(中国天津外国語大学日本語学院専任講師)

学び合う共同体の構築

  この度、私が申請いたしました「戦後日中教育文化交流史に関する教育学的研究―大平学校の事例を中心に」を第29回環太平洋学術研究助成費の対象にご選定いただき、誠に光栄に存じております。大平正芳記念財団の運営・選定委員会の先生方と関係者の皆様に厚く感謝申し上げます。
   本研究は、1972年の日中国交回復後、「在中華人民共和国日本語研修センター」(通称「大平学校」、1980年~1985年) を拠点に展開された日本語教育の実践が、日中両国間の教育文化交流に与えた影響とその意義を明らかにするものです。
   大平学校は、文革直後の1979年12月に大平正芳首相(当時)の訪中をきっかけとして誕生した機関であり、ODAの形で、5年間にわたり中国の大学の現職日本語教師、計600名の再教育を行いました。
   大平学校の主任として中心的役割を果たしたのは、佐治圭三教授であるが、その他、上智大学教授金田一春彦などの日本を代表する著名な国語国文学・日本語教育の学者(のべ91名)が相次いで赴任し講義を行いました。
   大平学校で学んだ研修生は、同窓会を通してネットワークを形成し、その後現在に至るまで約30年間にわたり中国の日本語教育を支えてきました。現在、中国の大学における日本語教育の指導者の多くは大平学校出身と言っても過言ではありません。
   このように大平学校は日中教育文化交流史上、傑出した成功事例であり、その後の中国における日本語教育の改革、日中教育交流の人材育成の上で、重要な役割を果たしました。
   現在、日中国交回復後、約40年が経過し、日中関係は様々な軋轢を抱えています。その故にこそ日中間の教育交流の歴史を鑑みることで、新しい日中関係を如何に構築すればいいのか、再検討の必要があるのでしょう。
   今回の受賞を励みにして、これからも研究に励んで参りたいとおもいます。本当にありがとうございました。

略歴
1979年、中国山西省生まれ。2003年天津外国語大学日本語学科を卒業後、修士課程に入学。2006年修了後、同大学日本語学院に就職。2007年~2009年中国教育部に出向。2009年より、早稲田大学留学。2011年4月早稲田大学大学院教育学研究科入学。2015年3月早稲田大学より博士を取得。主な研究領域は言語教育政策、生涯学習、教師教育。主要論文:「日中国交正常化以降の中国における日本語教育と日中交流―大平学校(1980年~1985年)に焦点を当てて―」『アジア教育』7、35-47頁、2013-11、等。

1

2

PAGE TOP