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第37回環太平洋学術助成費受賞者

『「小国」の勲章外交-琉球・ハワイ・大韓帝国』
森 万佑子
(東京女子大学現代教養学部国際社会学科国際関係専攻准教授)
  この度は、第37回環太平洋学術研究助成費に、研究テーマ「『小国』の勲章外交?琉球・ハワイ・大韓帝国」をご選定いただき、誠に光栄に存じます。大平知範理事長をはじめ大平正芳記念財団の関係者の皆さま、および選定委員の先生方に、この場をお借りして、深くお礼を申し上げます。  私は、博士論文をまとめた『朝鮮外交の近代?宗属関係から大韓帝国へ』(名古屋大学出版会、2017年)で、第35回大平正芳記念賞を受賞しました。賞を授けていただいたお陰で、多くの方々に拙著を知っていただきました。なかでも、拙著が中央公論新社の白戸直人さんの目にとまり、次の作品である『韓国併合?大韓帝国の成立から崩壊へ』(中公新書、2022年)につながったことは、望外の喜びでした。  お陰様で『韓国併合』は多くの方々に読んでいただくことができ、たくさんの書評やコメントもいただきました。その中で、近代イギリス政治外交史がご専門でイギリス王室に詳しい君塚直隆先生から、今回の研究テーマにつながる勲章外交のアイデアをいただきました。「小国」の勲章外交をキーワードに、「小国」の独立や併合の意味を再考し、そこから東アジアにとどまらない環太平洋を含む広い視野で世界史を捉え直すことは、たいへん面白そうだと直感しました。というのも韓国併合を研究していると、どうしても細かな史実に目が行き、当時の世界史の動態を見失いがちだったからです。  2023年6月現在、日韓関係は、岸田文雄総理と尹錫悦大統領によって関係改善に向けたダイナミックな取り組みがみられます。ただ、依然として、韓国では歴史問題で日本に対して厳しい見方があることも事実です。  私は、韓国近代史を専門としつつ、朝鮮半島の地域研究者として、史実を精確に調べるとともに、環太平洋を含む広い視野で「小国」からみた世界史を描きたいと思います。本研究が、ミクロとマクロの両方の視点から歴史像を提供することで、日韓の歴史問題について多面的に議論しながら互いの信頼を深め、未来世代のために揺るぎない日韓関係を構築していく一助となれば幸いです。

略歴
 1983年愛知県生まれ、2006年津田塾大学卒業、08年東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了、12年ソウル大学大学院国史学科博士課程単位取得修了、15年東京大学大学院総合文化研究科博士課程満期退学、16年博士(学術)、博士論文は第4回松下正治記念学術賞受賞、日本学術振興会特別研究員(PD)などを経て、2018年東京女子大学専任講師、現在同准教授。専門は地域研究(朝鮮半島)、朝鮮近代史、近代東アジア国際関係史、主な著書は 『朝鮮外交の近代』(名古屋大学出版会,2017年. 第35回大平正芳記念賞受賞)、『ソウル大学校で韓国近代史を学ぶ』(風響社、2017年)、『韓国併合』(中公新書 2022年)

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