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第24回 受賞作及び受賞者名

“Japan’s Dual Civil Society – Members Without Advocates” (Stanford University Press 2006年)

Robert Pekkanen(ロバート・ペッカネン) (ワシントン大学日本研究学科長准教授)

<二人の指導教官も受賞した栄誉ある賞を受賞して>

このたび大平正芳記念賞受賞の栄誉に浴し、大変光栄に思っております。この分野において最も権威あるこの賞を手にされる方は、誰でも非常に名誉なことと思われることでしょう。しかし、私にとってこの賞をいただくことは格別に感慨深いものがあります。私は以前、四国、主に香川県に滞在した経験があり、大平先生が後世に遺された遺産の偉大さをこの目で直に見てきた経験から、先生のご芳名を冠したこの賞の価値を真に理解しております。四国に行かれたことのある方は、大平正芳先生が今も地元の方々の敬愛と尊敬を集めておられることをご存知でしょう。私の著書が大平正芳記念賞を受賞することを非常に光栄に思う最大の理由は、大平先生が成し遂げられた偉業の素晴らしさに他なりません。そして今回の受賞を喜ぶ理由の中には、個人的なものもあります。それは、私の大学院博士課程での指導教官の2人も過去にこの栄えある賞を受賞されているからです。私の師であるRichard J. Samuels 教授は1988年に『Rich Nation Strong Army』で、Steven K. Vogel教授は1998年に『Freer Markets, More Rules』でこの賞を受賞されました。Samuels、Vogel両教授に比べると、私はまだまだ未熟者ではありますが、両先生と同じ栄誉に与ることを大変うれしく思っております。

 今回賞をいただいたこの本は、日本の市民社会の特殊な制度構造をもたらした要因と、こうした構造が引き起こす影響を分析・研究したものです。本書の主な主張は、多数の自治会によって構成される活発な地縁的市民社会と比較的数の少ない専門職化した市民社会にみられる、日本の市民社会の二重構造を形成する重要な役割を果たしたのは国家であるというものです。本書はさらに、こうした市民社会の二重構造がもたらす影響を検証し、活発な地縁的市民社会は社会関係資本を形成するが、政策提言を行い、政策形成に影響を与えることができるのは専門職化した市民社会組織だけであるという主張を展開します。そして大平正芳記念財団の活動自体が、本書の主張を支持する論証となっているとも言えます、なぜならば貴財団が行っておられる重要な社会貢献が、市民社会組織が担う役割の好例となっているからです。

 本書が大平正芳記念賞に選ばれたことを心から光栄に思っております。本書の執筆にあたってお世話になった数多くの人々に、この場をお借りしてもう一度お礼いたしたいと思います。そして、大平記念財団の評議会、選考委員会、そして職員の方々にもお礼申し上げます。

略歴
現在ワシントン大学ジャクソン国際研究スクール日本研究学科長、准教授。過去に東京大学と慶応大学で客員研究員、筑波大学で客員教授を務める。2002年、ハーバード大学大学院政治学科においてPh.D.(政治学)を取得。『The American Political Science Review』、『 The British Journal of Political Science』、『 The Journal of Japanese Studies』などの学術誌において論文を発表している。著書の『Japan’s Dual Civil Society: Members without Advocates』は、第24回大平正芳記念賞と日本NPO学会賞を受賞し、『The Japan Times』紙の「the Best Asia Books of 2006」に選ばれた。佐々田博教の翻訳による同書の日本語版、『日本における市民社会の二重構造:政策提言なきメンバー達』は、木鐸社から2008年2月末に出版された。

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