『The US-Japan Alliance
―Balancing soft and hard power in East Asia』
(Routledge 2010年)
David Arase(ポモナ大学政治学部教授)
Tsuneo Akaha(モントレー国際大学国際政策学教授兼東アジア研究センター所長)
この名誉をいただき、大平正芳記念財団と記念賞選考委員会の皆様方に心から感謝申し上げます。The U.S.-Japan Alliance: Balancing Soft and Hard Power in East Asia(日米同盟─東アジアにおけるソフトパワーとハードパワーのバランス)は、ジンドン・ユアン教授(現在オーストラリア在住)、ダニエル・ピンクストン博士(韓国)、セルゲイ・セヴァスティアノフ教授(ロシア)、クリストファー・ヒューズ教授(英国)による章も含まれています。この本では、米国の安全保障戦略と東アジアの変化する勢力均衡が、いかに日本を新たなハードパワー能力へと追いやっているかが論じられています。
しかし、平和憲法と戦後の感覚に根付く日本の対外政策と安全保障政策へのソフトパワー的アプローチは今もなお国民に支持されており、また近隣諸国でも高い評価を受けています。よって、日米同盟と東アジア地域において適切なバランスをとろうとする日本政府にとって大きなチャレンジとなっています。
日米同盟は、環太平洋連帯を可能にするために最も重要な太平洋を横断する関係ですので、私たちの本が環太平洋連帯構想の強化に役立つことを望んでおります。環太平洋連帯が渾然たるものであるためには、日米同盟とそこにおける日本の役割がソフトパワーとハードパワーの両方に基盤を置いたものでなくてはならないことを頭においていただきたいと思います。
最後になりましたが、本年3月11日に起きた災害には心が痛みます。しかし、悲壮な状況の中で日本は目覚ましい回復力と忍耐力、さらに互助の心を見せてくれました。皆さんの気迫のおかげで、世界におけるより強力な日本の姿を見ることができました。回復のためのこれからの努力によって、日本は、ハードパワーを犠牲にすることなく、莫大な新しいソフトパワーを得ることが出るのではないでしょうか。日本には、人類を原子力から遠ざけるための財力、技術力、また政治資質があるのではないでしょうか。決意をもって進めば、きっと成功するものと思います。そうすれば、世界は日本に感謝することとなるでしょう。
David Arase 略歴
Ph.D. 政治学 (1989) カリフォニア大学政治学部博士課程卒業。Master of Arts 国際関係 (1982) ジョンズホプキンズ大学高等国際問題研究大学院(Paul H. Nitze School of Advanced International Studies(SAIS))修士プログラム卒業。Bachelor of Arts (1977) コーネル大学。ポモナ大学政治学部教授 (1989-現在)。南京大学─※翰斯・霍普金斯大学中美文化研究中心派遣教授 (2011-2012)。筑波大学外国人教師 (1997-1998)。ロンドン大学 School of Oriental and African Studies政治学部講師(1994-1995)
Tsuneo Akaha 略歴
1949年茅野市生まれ。オレゴン州立大学卒(政治学)、早稲田大学(政治学)卒。南カリフォルニア大学より国際関係論修士号、博士号取得。フルブライト研究フェロー、国際交流基金プロフェッショナル・フェロー。最近の著書に「東アジアにおける国境を越えるヒトの移動─人間の安全保障の視点から」『越える─境界なき政治の予兆』(押村高編、風行社、2010年)、「現代日本のナショナリストの再構築における”中国”」『分裂の再検討─日中関係におけるアイデンティティ、記憶、ナショナリズム』(ゲリット・ゴン、ヴィクター・テオ共編、ケンブリッジ学術出版、2010年)がある。現在、カリフォルニア州モントレー国際大学国際政策学教授兼東アジア研究センター所長。