『Cultures of Commemoration - The Politics of War, Memory, and History in the Mariana Islands』(University of Hawaii Press 2011年)
Keith L . Camacho(キース・L・カマチョ)(カリフォルニア大学ロサンゼルス校 アジア系アメリカ人研究学部 准教授)
チャモロの語り継ぎのもつ力
ハファ アダイ。こんにちは。
マリアナ諸島における戦争と記憶と歴史に関する私の著作に対して、授賞いただいた大平正芳記念財団とその理事会、並びに選定委員会の皆様に感謝申し上げます。このように名高い財団より、ある意味、チャモロ人と日本人とアジア太平洋地域の人々とのあいだの知的・政治的交流の原点に基づく評価をいただくことができ、いっそう身の引き締まる思いです。
わが祖先が数十年前に第2次世界大戦に巻き込まれていた当時は、こうした相互承認、相互評価、相互理解といった取り組みへの努力は希有なことでした。むしろ、それぞれの社会において、教育、軍事、国家主義、民族、宗教といったものが、互いに分離した公共空間を形成していました。そういうわけで、大量虐殺や戦争や核の時代などを生き、それらの記憶を和らげようとしてきた先行世代によって、なおさら相互理解へ向けた苦心がなされたわけです。しかし私たちは、共に努力することによって、環太平洋域でもその他の場所でも批判的で包括的な議論の場を育てることができます。こうしたことなどから、私たちがこれからの数十年、あるいはその先にまで及んで築きうる学術的協力関係について、私は楽観的な見通しをもっています。私たちの取り組みの前途には、明るい光が差しています。
最後に、祖父母たちに対し謝意を表します。彼らは語り継ぎに対する情熱を私に注いでくれました。サイパンのチャラン・ピアオにいたフランシスコ・カマチョとローザ・カマチョ、グアムのバリガダにいるホアン・ルーハンとマグダレナ・ルーハンの4人のことです。祖父ルーハン以外は、いずれもすでに他界しているのですが、4人は共に、チャモロの語り継ぎがもつ力、すなわち、チャモロの語りの内容やその語り方に内在するユーモア、祈り、謙虚さ、粘り強さを私に教えてくれたのです。彼らが語ったことも大平正芳記念財団による評価に含まれているのだと知れば、彼らはきっと、たいへん喜ぶはずです。
シー ズーウス マァシー、サイナ。皆様、どうもありがとうございました。
略歴
マリアナ諸島を原住地とするチャモロ族を研究して、アジア太平洋地域における、植民地化とそれからの解放、そして軍国主義に関する問題について、存続と主権に関する固有のテーマに重点をおいている。現在、カリフォルニア大学ロサンゼルス校のアジア系アメリカ人研究学部で、太平洋諸島の住民の研究に関する準教授、また同大学の居住生活部門のFaculty-in-Residenceの地位にある。著書にThe Politics 0f War, Memory,History in the Mariana lslands(マリアナ諸島における戦争の政治、記憶、歴史)”(University of Hawaii Press,2011)。2009年にLois M.Takahashi教授とともにチヨコ・ドリスとトシオ・ハシデの優秀教育賞(the chiyoko Doris and Toshio Hoshide Distinguished Teaching Prize)を共同受賞している。