『China’s Urban Labor Market-A Structural Econometric Approach』(京都大学学術出版会、香港大学出版社 2013年)
Yang LIU(リュウ・ヨウ)(独立行政法人 経済産業研究所 研究員
独特の性格と共通の市場メカニズムを経済学モデルで解明
このたびは、伝統ある大平正芳記念賞を賜り、光栄の至りです。大平正芳記念財団理事の皆様、運営・選定委員の先生方、そして故大平正芳総理に対し厚くお礼申し上げます。恩師である有賀健先生、研究に貴重な助言をして下さった先生や同僚の方々、そして日々支えてくれている家族に、心より感謝致します。
拙著は中国都市部の労働市場について、サーチ理論など現代労働経済学の視点からの考察を試みました。計画経済から市場経済へ移行する中、中国の労働市場は大きく変貌しました。より自由になった求人と求職の活動、ダイナミックな雇用創出と雇用消失、失業と人手不足の併存、制限下にも関わらず大規模になった労働移動などが、中国労働市場の風景となっています。特に、国が労働者を配置していた計画経済時代と比べてみると、90年代以降の中国の労働市場は、市場経済的な性格が顕著に見られます。労働者と企業が自分の意思に基づき最適な選択をし、市場メカニズムに従って行動するようになりつつあります。
このような独特の性格を持ちながら、市場経済への移行が大きく進んだ中国労働市場に対して、現代労働経済学における需要・供給理論と、サーチ・マッチング理論という2つのアプローチに従って分析を行いました。なぜ中国で高失業率と人手不足が併存するのか、農村から都市への移民が都市労働市場に与える影響などの課題に注目しました。世界共通の研究手法を利用し、英語で執筆を行い、少しでも多くの方々に中国の労働市場に関心を持っていただくことができれば幸いに思います。
最後に、これまで、ウシオ財団奨学金、日本政府国費留学生奨学金、京都大学総長裁量経費出版助成などから多くのご支援をいただきましたことに厚く御礼申し上げます。また、現在、日々一緒に研究に携わっている経済産業研究所の同僚の方々、自立した研究者として育ててくださったアジア太平洋研究所の皆様、拙著の出版につき査読・校閲に多くの時間と力を費やした京都大学学術出版社と香港大学出版社の関係者の方々に、心より感謝致します。今回の受賞を励みにし、今後一層精進していきたいと思います。
略歴
1984年中国山東省生まれ
2002年?2006年 上海財経大学
2007年?2009年 京都大学大学院 経済学研究科修士課程
2009年?2012年 京都大学大学院 経済学研究科
博士後期課程 博士学位 (経済学)
2011年?2012年 独立行政法人 JICA研究所研究助手 (非常勤)
2012年?2014年 一般財団法人アジア太平洋研究所 研究員
2012年?現在 大阪大学社会経済研究所 招へい研究員
2014年?現在 独立行政法人経済産業研究所 研究員