『現代中国の日本語教育史―大学専攻教育と教科書をめぐって―』（図書刊行会 2015年）
田中 祐輔（たなか・ゆうすけ）（東洋大学国際教育センター専任講師）
この度は、第32回大平正芳記念賞特別賞の栄誉に預かり、大平正芳記念財団の関係者の皆様、運営・選考委員の先生方に心より御礼申し上げます。また、本研究の遂行と本書の刊行に際し多くの支援を与えてくださった勤務校東洋大学の福川伸次理事長をはじめとする先生方、並びに、ご指導くださった恩師の方々、特に本書をご推薦くださった筑波大学名誉教授の今井雅晴先生にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
21世紀は「アジアの時代」「太平洋の世紀」とされますが、故大平正芳総理が提唱された環太平洋連携構想の意義は益々高まっているものと考えられます。殊に、その中心的役割を担う日本と、隣国である中国との関係深化・相互理解は必要不可欠であり、広くは世界情勢の安定と連携強化を促進する極めて重要なものと考えられます。
こうした中、中国における日本理解を着実に支えてきたのが、日本語の学習と教育です。本書がテーマとして掲げた中国における日本語教育の歴史は、中国という国が、日本という隣国を理解し、共に対話を重ねたプロセスそのものでもあります。本書では、現代中国において日本語教育がどのような役割を果たしてきたか、また、その歩みの中で人々の間にどのような交流や努力があったかなどを追いながら「日本の国語教育」と「中国の日本語教育」との関わりという観点から現代中国の日本語教育史を考察いたしました。
今回、図らずも頂戴いたしました本賞は、私個人が頂いたものというよりも、むしろ本書が据えたテーマと、貴重な証言を述べてくださった協力者の方々や資料提供者の皆様、そして、日本語学習と教育という形で日中文化交流史を築かれてこられた皆様の歩みと今後の未来に対して与えられたものであると認識しております。
今後の研究に際しましても、その責任を強く自覚いたしまして、誠心誠意取り組んで参りたいと考えております。重ねまして素晴しい栄誉を賜わりましたこと、大平正芳記念財団の皆様に厚く御礼申し上げます。 本当にありがとうございました。
略歴
1983年神奈川県生まれ。
2003～2007年 筑波大学日本語・日本文化学類
2007～2009年 早稲田大学大学院日本語教育研究科日本語教育学専攻修士課程
2009～2013年 早稲田大学大学院日本語教育研究科日本語教育学専攻博士後期課程
（博士：日本語教育学）
2009～2011年 復旦大学外国語学院日本語学部 外国人専任講師
2011～2013年 日本学術振興会特別研究員DC
2013～2013年 早稲田大学大学院日本語教育研究科助手
2013年～現在 東洋大学国際教育センター講師
