『プロトタイプシティ 深センと世界的イノベーション』
(KADOKAWA 2020年)
高口 康太(写真)・高須 正和・澤田 翔・藤岡 淳一・伊藤 亜聖・山形 浩生
このたびの受賞、身に余る光栄です。中国、イノベーション、経済発展、都市開発といった大きなテーマを、いささか未整理のまま詰め込んだ本書ではありますが、著者たち全員が共に感じている未来へのビジョンを多少なりとも評価していただけたのであれば、これに勝る喜びはございません。
■手を動かすことを主体にした集団思考
本書『プロトタイプシティ』は、起業家、ソフトウェア/ハードウェアのエンジニア、イノベーションや中国の研究者など、さまざまな経歴の執筆者が集まって書かれた書籍です。この活動は、2014年から活動している「ニコ技深センコミュニティ」の一環として生まれたものです。
まだ理論化されていないものを、各人が自分の手を動かし、体験と共有を通じて集合知で体系化するのが我々コミュニティのアプローチです。これまでの社会になかった新しいものは、そうした手を動かすことを主体にした集団思考を行うことで、初めて読み解いて身につけることができると考えています。そして本書の主題となった深センという都市や各種イノベーション活動自体も、まさにそうした実践を通じて構築されてきたものです。本書は、実践を通じた著者たちと対象との共振の産物だと考えております。そして活動の一方的な観察や分析、見学に留まらず、深センの起業家やエンジニアとの共同プロジェクトもいくつか生まれつつあります。本書はその共同プロジェクトの一つでもあります。
■共に手を動かして前に進む
世界はさらなるイノベーションを必要としています。そのためには複数の専門分野にまたがる人々、分野や国境を超えた共同作業の重要性が増すはずです。中国深センとそのハッカー文化に端を発する「改革開放」「大衆創業、万衆創新」「インターネットプラス」などの言葉は、そうした行為の言語化でもあります。今回の受賞で、その考えが決してまちがっていなかったという思いを新たにしております。これを機にさらに広い領域で共に手を動かし続ける実践の思考を深めていきたいと考える次第です。
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