「エネルギー版TPP[環太平洋経済連携]構想実現に資する国際電力連系プロジェクトからの教訓とアジア・太平洋地域への適用」
長山 浩章(ながやま・ひろあき)(京都大学 国際交流推進機構 教授)
必要とされる電力の国際連係
この度、私が申請いたしました「エネルギー版TPP[環太平洋経済連携]構想実現に資する国際電力連系プロジェクトからの教訓とアジア・太平洋地域への適用」を第26回環太平洋学術研究助成費の対象にご選定いただき、誠に光栄に存じております。大平正芳記念財団の運営・選定委員会の先生方と関係者の皆様に厚く感謝申し上げます。
2011年3月11日に発生した東日本大震災に起因する福島第一原子力発電所の事故により、これまで安定供給の名のもとに維持されてきた我が国の電力事業体制が再考の時を迎えています。
特に我が国においては電力会社ごとのエリアで地域的には需給がバランスしていましたが、今回のような事故が起きると非常時の東京電力管内での電力供給不足に対し、連系線や周波数変換所の容量不足により地域間での電力融通に問題が生じてきています。
こうした問題を解決するための手段として電力の国際連系が、国内外の諸機関で検討されはじめています。電力の国際連系プロジェクトは、地域における電力事業の効率化、電源構成の多様化と電力の安定的供給を通じて地域安全保障の確立に有効であります。 また、域内に張り巡らされた送配電システムがオペレーションコストの低下を促し、電気料金の削減にも繋がる一方、各国の天然資源や新エネルギーを利用することで、新規の電源開発が促進され、市場統合を通じて電源構成の多様化と電力の安定的供給を確保することができます。
本研究ではこうした観点から、諸外国ではすでに進められている国際電力連系プロジェクトの調査を行い、そこからの教訓・課題を明らかにします。さらに日韓ロシアを中心とするアジア・太平洋地域での実現に向けての課題を検討いたします。
今回、研究助成を頂いたことで、国際電力連系プロジェクトが早期に実現するように鋭意研究を進めていきたいと考えております。
略歴
1988 慶応大学経済学部卒業(専門:計量経済学)
1988 三菱総合研究所入所
1992 エール大学経営大学院修了(MBA取得)
2004.8 ケンブリッジ大学応用経済学部客員研究員
(2005.8まで)
2007 京都大学大学院エネルギー科学研究科博士後期課程修了
(博士(エネルギー科学))
2008 京都大学国際交流センター教授に採用現在に至る。