『アジア太平洋地域におけるインクルーシブな安全保障共同体の構築ーフェミニスト平和運動のトランスローカルな連帯実践の事例から』
影山 優華 (同志社大学グローバル・スタディーズ研究科 博士後期課程)
この度は、名誉ある第38回「環太平洋学術研究助成」に採択いただき、大変光栄に存じます。大平知範理事長をはじめ、大平正芳記念財団の関係者の皆さま、選定委員の先生方、日頃から研究活動を支えてくださる皆さまに心より感謝申し上げます。 今日の社会では、格差や貧困、紛争、気候災害、パンデミックなど、個人の生活を脅かす国境を越えた課題への対応が求められています。一方で、国家間の対立や軍事的脅威が強調されています。このような状況下で安全保障を考える際には、大平正芳元首相が提唱された「地球社会」という、私たち誰もが一つのコミュニティを共有する相互依存した存在であるとの認識がより一層重要性を増しているように思われます。 今回選定いただいた研究は、生命のウェルビーイングや、尊厳の尊重を中心に据えた安全保障の実現に向けて活動するフェミニスト平和運動に焦点を当てています。研究対象である「軍事主義を許さない国際女性ネットワーク(IWNAM)」は、沖縄、韓国、フィリピン、米国本土、日本本土、プエルト・リコ、グアム、ハワイの運動家・研究者による国境を越えた運動を展開しています。IWNAMは、米軍駐留地域の性暴力や環境破壊などの問題に取り組む経験を通して安全保障の再定義を行ってきました。 本研究では、国家間の政治的・経済的力関係、それらを反映するメンバーの間の差異や力関係にも留意しつつ、地域コミュニティ間の平等な関係構築を目指すIWNAMのトランスローカルな連帯実践を明らかにします。これによって、国家中心・軍事偏重・男性主導の伝統的安全保障に代わる、新たな安全保障の視座を提示することを目指します。 本研究が「安全保障」をアジア太平洋地域・地球規模の問題として捉え直し、人々が共存共栄できるインクルーシブな共同体の創出に寄与できれば幸いです。 本研究を進めるにあたり、お力添えをいただくことに深く感謝を申し上げるとともに、研究活動に精進する決意をいたします。
略 歴
2015年、立命館大学国際関係学部卒業後、インターンシップとして国際NGO、Religions for Peaceのニューヨーク本部にて諸宗教協力による平和構築に関与。2020年、同志社大学グローバル・スタディーズ研究科博士前期課程修了。現在まで同学博士後期課程在学。2022-24、米国クレアモント大学院大学客員研究員。 「婦人国際平和自由連盟」(WILPF)、「武力紛争予防のためのグローバルパートナーシップ」(GPPAC)、「軍事主義を許さない国際女性ネットワーク」(IWNAM)等の国際市民社会団体を通した平和運動にも携わる。
「環太平洋連帯構想」の推進と思想の普及に寄与する
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