第二十回 日本語優秀学位論文大会
劉奕炜 | BCCWJ サブコーパスにおける「トコロダ」 の使用傾向の研究 |
樊莹莹 | 中国人日本語学習者の「意味づけ」による外国語不 安と楽しさの発生に関するナラティブ研究 |
黄炎 | 『青頭巾』の方法 |
張彩莹 | 『NUMBER』雑誌における女性アスリートの身体 イメージ表現の考察――身体フェミニズムとジェ ンダーの視点に基づいて―― |
杜妞妞 | 和辻哲郎の神話研究 ――『日本古代文化』を手がかりに |
張瑞雪 | 東京圏の産業構造と経済空間の変容―階層構造を中心に― |
■受賞者からのメッセージ
北京外国語大学 張 彩瑩
北京日本学研究センター修士課程37期日本社会コースの張彩瑩です。この度は修士論文が評価されたことについて、指導先生の温かな励まし、仲間たちの支え、大平財団様からのご支援には深く感謝いたします。
修士論文「『NUMBER』雑誌における女性アスリートの身体イメージ表現の考察―身体フェミニズムとジェンダーの視点に基づいて―」では、2004年から2022年に刊行されたスポーツ雑誌『NUMBER』445冊を分析対象としました。女性アスリートの身体表象が依然として性的まなざしに晒される実態を明らかにする過程で、(1)伝統的ジェンダー規範の残存;(2)細身で小柄な身体像の偏重;(3)ジェンダー規範の部分的更新、という三つの特徴を抽出しました。身体フェミニズムの視座から、メディアが再生産するジェンダー秩序の矛盾と変容可能性を考察した結果、身体の自己決定権確立におけるメディアの責任が重要であるとの結論に至りました。
本研究の基盤は北京日本学研究センターでの学びにありました。社会コースでの講義は、日常に潜む権力関係を可視化する社会学的想像力を養うものでした。ジェンダー論の授業では理論と現実の乖離に直面するたび、知的衝撃を受けました。図書室の日本語文献、教授陣の厳格な指導、深夜まで続く学生同士の議論——これら3年間の研鑽がなければ研究は成立し得なかったのです。指導先生から賜った「研究とは社会観察の解像度を高める行為だ」という言葉は、論文執筆中の羅針盤となりました。
研究テーマ選択の背景には、センターでの学びを通じて深めたフェミニズムへの関心がありました。フェミニズム理論との出会いは、社会で自然と内面化していたジェンダー規範への気付きを促しました。同時に、幼少期からのスポーツ観戦趣味が、女性アスリートの身体を巡る表象問題への関心を育んでいました。ウェブサイトで日本のスポーツ雑誌を分析中、水着姿の女性選手と筋肉質の男性選手の対比を見た瞬間、研究対象が定まったことを鮮明に記憶しています。
3年間で獲得した最大の財産は、社会を多角的に分析する「眼」でした。街中の広告看板からテレビ番組まで、あらゆる事象が研究素材となり得ることを学んでいました。今後も本センターで培った批判的思考力を礎に、ジェンダー平等実現に向けた社会的対話に貢献したいと考えております。最後に、学問的基盤を築かせてくださった恩師方、切磋琢磨した仲間、そして日本の文化理解に寛容であった家族、そしてご支援いただいた大平財団へ、深甚なる感謝の意を表したいと思います。本当にありがとうございました!