北京日本学研究センター

第十八回 日本語優秀学位論文大会

高宁 中国における西洋音楽用語の受容に関する実証的研究―曽志忞《楽典教科書》(1904)を中心に―
狄燕 中国人日本語学習者における使役の習得研究-日本語教育文法の視点による実証的検討-
周琼彬 芥川龍之介「将軍」論――その改編と創作を中心に
张语铄 岡倉天心の日本文化論——『東洋の理想』『日本の覚醒』『茶の本』を中心
章新荣 日本のテレビCMにおけるジェンダー役割に関する研究――インターセクショナリティの視点に基づいて――
郭箩 日本における新規学卒者の就職に関する考察――中国への示唆

■受賞者からのメッセージ
北京外国語大学 周琼彬
まずは我々日本語の学生に多大なる支援を寄せていただいた大平財団に、こころより深く感謝の意を申し上げます。
本論文の執筆にあたり、指導教官の秦剛教授は終始丁寧なご指導を賜りました。多大なご教示、ご鞭撻のもとで、テーマの選定や研究の進め方などの作業が順調に進むことができました。論文の完成にあたって、改めて秦剛先生に感謝の意を申し上げたいと存じます。また、いつも温かくご指導くださった張龍妹教授にも深くお礼を申し上げます。ご多忙中に相談に乗っていただいた横浜市立大学の庄司達也教授にも心より感謝いたします。これまで辛抱強く見守ってくださった北京日本学研究センターの先生方、研究資料の入手で大変お世話になったセンター図書館の先生方にも心より深く感謝を申し上げます。
論文の執筆に苦労した日々も終わりに近づいていた去年の三月の頃、普通ならうれしい気分になるはずですが、なんだか落ち着かなくてさびしい気分になってしまったことが、まだ記憶にのこっています。論文を書くことは、数知れない現象の下に埋まった真相を掘り出す苦しみを伴いますが、それなりの楽しみもあります。
本論文のテーマは芥川龍之介の小説「将軍」の作品論ですが、私は書くたびにいつも芥川龍之介の博識さと鋭い洞察力に感心していました。芥川の芸術は高度な合理性を凝縮した芸術で、それに、自意識に満ちる純粋な法悦です。
日常の芥川はだいたい周りに謙虚さと妥協を持って付き合っていましたが、そのおもての下に人間性への疑念と透徹さを見ることもできると思います。また、芥川が最終的にその社会と人間性のポジティブな側面を信じることができず、自殺を選んだことに残念でなりません。
「わたしはこの春酒に酔い、この金鏤の歌を誦し、この好日を喜んでいれば不足のない侏儒でございます。」(侏儒の言葉)
「ぼんやりとした不安」になって自殺してしまった芥川龍之介でも、この世界を愛していた頃もあるに違いないです。
最後になりますが、再び貴財団に深くお礼を申し上げます。これからも続いて中日両国の架け橋になり、日本に関する文化と知識を発揚していきたいと思います。

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