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第24回 研究テーマ及び受賞者

 「自民党内親中派による日中国交正常化への軌跡―古井喜実を中心に」

鹿 雪瑩(ロク・セツエイ)(京都大学、神戸女子大学非常勤講師)
 
<自民党内親中派と戦後の日中関係史の研究に向けて>

 この度、期せずして「第24回環太平洋学術研究助成費」を賜り、身に余る光栄に存じます。とりわけ、自民党内親中派とも見られ、日中関係の発展に多大なる功績を残された故大平正芳総理の名を冠した助成費を授与していただけたことは、自民党内親中派と戦後の日中関係の研究に従事する者として、望外の慶びとするところであります。この度の受賞に際しご高配を賜った財団関係者の皆様、選定委員の先生方に衷心より御礼申し上げます。また、恩師の永井和先生(京都大学文学研究科教授)、日中友好会館の小池勤先生をはじめ、長年にわたってご指導、ご支援くださったすべての方々にも感謝申し上げます。
   私の研究課題「自民党内親中派による日中国交正常化への軌跡-古井喜実を中心に」を当該研究助成費の受賞対象にご選定いただいたのは、私が博士課程在学中の時でした。その後、今までの研究内容をまとめて博士論文として提出し、今年の三月に博士学位を取得できました。偶には非常勤講師を務めている大学で、研究内容の一部を講義しましたが、「今までよく知らなかった親中派の日中国交に対する動き、影響がわかった」、「自民党内親中派に焦点を当てることで、今の日中関係を考える際にも重要だ」、といった学生の反応から、改めてこの研究の必要性と重要性を痛感しました。
   本研究は、国際情勢の変化を背景に、古井喜実を中心とする自民党内親中派の結集、成長、衰弱、拡大の道を辿りながら、講和後から日中国交正常化に至るまで、日中関係打開及び国交正常化における自民党内親中派の動き、役割、位置付けを明らかにすることを研究目的としました。実際、自民党内親中派のことについて、今までの日中関係史の研究においてないわけではありません。しかし、従来の研究においては、あくまでも断片的、個別的なイメージによって論じるにとどまっていること、親中派が対中接近を支えた思想的立場について、必ずしも十分な研究がなされていないこと、彼らが政府の対中政策の決定にどのように関与したのかが明らかにされていないこと、などの問題点が残っています。この研究によって、以上に挙げた諸問題点を解決でき、今まで十分に検討されてこなかった政府ルートとは別の日中国交正常化を推進した主体である自民党内親中派の全体像をかなりの程度で解明できたと思われます。
   本研究の成果を踏まえて、日中国交回復後から1980年代末までの時期を取り上げ、日本の対中外交と自民党内親中派について、更なる研究を進めて行きたいと考えていますが、今回の受賞は、今後の研究に向けられたものと受けとめ、これを機に、これからも一層研究活動に励んで行きたいと考えています。

略歴
1975年中国山東省生まれ。1997年中国天津外国語学院日本語学部卒業。1997~2003年、中国曲阜師範大学外国語学部日本語教員。2006年京都大学文学研究科修士課程修了。2010年同大学文学博士号取得。専門は戦後日中関係史、日本外交史。主な論文に、「古井喜実と1968年の日中LT貿易交渉」(『史林』Vol.91,No.5,2008/9)、「古井喜実と1970年の日中MT貿易交渉」(『二十世紀研究』No.9,2008/12)、「古井喜実と日中国交正常化-LT・MT貿易の延長線から見る日中国交正常化」(『史林』Vol.93,No.2,2010/3)、など。現職は京都大学、神戸女子大学非常勤講師。 

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