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第26回受賞作及び受賞者名

 『アジア地域主義とアメリカ―ベトナム戦争期のアジア太平洋国際関係』(東京大学出版会 2009年)

(ジョ・ヤンヒョン)(韓国外交通商部外交安保研究院助教授)

<冷戦期アジア地域主義研究の今日的意義>

  この度名誉ある大平正芳記念賞を賜り身に余る光栄に存じます。「環太平洋連帯構想」を打ち出しアジア地域主義に大きな足跡を残された故大平首相の遺志を受け継いだ学術賞に拙著『アジア地域主義とアメリカ』が選ばれたことに格別の思いを抱いており、大平正芳記念財団の皆様と選考委員の先生方に深く感謝致します。
   近年「東アジア共同体」構想を始め、アジアが地域としてまとまろうとする動きが活発になっています。拙著は戦後アジア地域主義の萌芽期とも言うべき1960年代半ばの地域機構設立の動きをアメリカ外交との関連に注目しながら実証的に描き出したものです。従来1960年代といえば、ベトナム戦争など「戦争」のイメージが強かったのですが、拙著では「開発」や「地域主義」といったテーマを取り上げ、アメリカを当事者として包み込むアジア太平洋国際関係の多様性をアメリカのアジア政策やアジア諸国同士の自律的相互関係との錯綜として捉えています。地域国際関係に対するこのような捉え方は冷戦終結後の国際関係の分析においても有効と思われ、拙著で示された歴史的経験をアジア地域主義の将来を考えるうえで知的素材としていただけたら幸いです。
   拙著が上梓されるまでにはソウル大学の先生方、東大留学の先輩・同僚たち、大学院の授業で教わった先生方とゼミの皆様など多くの方々にお世話になりました。とりわけ指導教官の山影進先生には博論の執筆と刊行はもとより留学生活全般及び帰国後の活動において全幅のご支援と激励を頂いております。また韓国の製鉄奨学会からの奨学金、富士ゼロックス小林節太郎記念基金からの研究助成、東京大学出版会からの刊行助成など財政援助を頂いており、この場を借りて心から謝意を申し上げる次第です。

略歴
1967年生まれ。韓国外交通商部外交安保研究院助教授。ソウル大学(学士)、東京大学(修士、博士)で修学。韓国国民大学日本学研究所の専任研究員を経て2006年より現職。ソウル大学、国民大学、仁荷大学、中央大学などに出講。代表著作に『アジア地域主義とアメリカ――ベトナム戦争期のアジア太平洋国際関係』(東京大学出版会, 2009年)。専門分野は日本ー東アジア国際関係。

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