『日米同盟における共同防衛体制の形成―条約締結から「日米防衛協力のための指針」策定まで―』
(ミネルヴァ書房)
板山 真弓
(国士舘大学政経学部専任講師)
この度は、大平正芳記念賞という大変栄誉ある賞を頂きまして、誠に光栄に存じます。大平正芳記念財団関係者の皆様、運営・選定委員の先生方、これ迄ご指導を下さいました先生方、本書の出版に関わって下さいました方々に、心からの御礼を申し上げます。
本書では、旧日米安全保障条約締結(1951年)から「日米防衛協力のための指針」策定(1978年)までの約30年間を通して議論し、当該時期における防衛協力の実態を明らかにすることにより「指針」の新たな捉え方を示しました。すなわち、従来は、「指針」により日米防衛協力が開始された、もしくは進展したと考えられていたのに対して、本書では、1950年代より秘密裏に実施されていた防衛協力を公式化したものとして捉えました。このように、現在に至る日米防衛協力の起点を、1978年ではなく、1950年代に見出すことは、日米同盟史の新たな見方を示すことにもつながります。つまり、既存研究においては、本報告が対象とする1950年代から1970年代の日米同盟を、「物と人との協力」、つまり、日本が基地を提供し、米国は軍隊を提供するという同盟のあり方であると捉えてきました。しかし、本書では、この時期においても、日米同盟に「人と人との協力」の側面、すなわち、日米両国が軍隊を提供し合って共同防衛を行なうという側面が存在したのではないかとの主張を行いました。
近年、日本を取り巻く国際情勢は厳しさを増し、日米防衛協力について、これ迄以上に注目される状況になっております。そのような中、日米防衛協力の端緒を探り、その発展の経緯を知ることは、現在、そして今後の日米安保体制について考える上で、重要な示唆を与えるのではないかと考えております。今回の受賞を励みに、これからも、より一層真摯に研究に取り組む所存でございます。この度は、誠にありがとうございました。重ねて御礼申し上げます。
略歴
1976年長崎県に生まれる。1999年東京大学教養学部教養学科卒業。2009年東京大学大学 院総合文化研究科博士課程単位取得退学。2014年東京大学より博士(学術)授与。東京大学大学院総合文化研究科学術研究員、東京大学社会科学研究所特任研究員、東京大学総合文化研究科グローバル地域研究機構アメリカ太平洋地域研究センター助教を経て、2020年より国士舘大学政経学部専任講師。専門は、国際関係論、安全保障、日米同盟。