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第35回 受賞作及び受賞者名

『朝鮮外交の近代― 宗属関係から大韓帝国へ』
(名古屋大学出版会 2017年)

森 万祐子(もり・まゆこ)
(東京女子大学現代教養学部国際社会学科国際関係専攻専任講師)

 この度は、大変名誉な大平正芳記念賞を賜り、誠に光栄に 存じます。
 受賞作『朝鮮外交の近代?宗属関係から大韓帝国へ』は、朝 鮮史研究のこれまでの成果に学びながら執筆しました。日 本の朝鮮史研究には長い伝統があり、精確で緻密な史料解釈 による世界レベルのすばらしい研究成果が多く蓄積されています。しかしながら、朝鮮史研究の作品がこのような大き な賞をいただくことはあまりありません。そのため、この度、 朝鮮史研究の成果にスポットライトを当ててくださった選 定委員の先生方および財団の皆様には深く感謝しております。朝鮮史研究は、単なる隣国の歴史研究という意味にとど まらず、今日の日韓・日朝関係を理解し、環太平洋の国際関 係を考える上でも必須の研究分野です。今回の受賞により、 少しでも多くの方が朝鮮史研究について興味を持ってくだ されば、これ以上の喜びはありません。
 拙著が扱った19世紀末の朝鮮は、中国(清朝)との間で宗属 関係などと呼ばれる関係を有していました。拙著は、そうし た中国と朝鮮の関係やその前提としての中華を、朝鮮の立場 から見るとどのように見えるのか、当時の文脈に即して検討 したものです。19世紀末は、日本・欧米諸国から条約がもた らされ、その秩序が現代まで続いているため、どうしても朝 鮮が条約関係をいかに理解したかに関心が向きますが、拙著 は、朝鮮が条約以上に中華と真摯に向き合っていたことを指 摘しました。朝鮮は、明朝ではなく清朝が中華の後継者とな り、さらに清朝が条約関係を参考にしながら宗属関係を変化 させてくることに反感を抱きつつも宗属関係を維持し、他方 で、朝鮮こそが中華の正統な継承者であるという自負を持ち ました。いわば、こうした二元的中華のもとで、朝鮮は対外 政策を行ったのです。その後、下関条約によって清朝との関 係が消滅し、中華が一元化したとき、朝鮮は1897年に大韓帝 国を成立させます。このように中華の存在形態の変化に着 目し、大韓帝国成立までを見通した朝鮮外交の展開を論じた ところに拙著の独創性があります。
 最後に、拙著の出版を導いてくださった松下幸之助記念志 財団の皆様および名古屋大学出版会の皆様にお礼を申し上 げます。そして、わたくしをここまでご指導くださった月脚達彦先生と岡本隆司先生に、この場を借りて、改めて衷心よ り感謝申し上げます。

略歴
1983年、愛知県生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程修了。ソウル大学校大学院人文大学国史学科博士課程単位取得修了。東京大学で博士(学術)を取得。博士論文は松下幸之助記念財団松下正治記念学術賞受賞。日本学術振興会特別研究員DC2(東京大学)、同PD(京都府立大学)を経て、現職。東アジア近代史学会常任理事。専門は、朝鮮政治外交史、韓国研究、近代東アジア国際関係史。他の業績として『ソウル大学校で韓国近代史を学ぶ』(風響社、2017年)。

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