『アメリカ政治とシンクタンク―政治運動としての政策研究機関』(東京大学出版会 2017年)
宮田 智之(みやた・ともゆき)(帝京大学法学部講師)
このたびは、大変名誉ある大平正芳記念賞を賜り、誠に光栄に存じます。財団関係者の皆様、運営・選定委員の先生方、本書執筆にあたり数々のご指導を下さった方々、出版にあたりご支援を下さった方々に、心より御礼を申し上げます。
本書『アメリカ政治とシンクタンク-政治運動としての政策研究機関』の最大の目的は、アメリカ政治においてシンクタンクがどのような影響力を有しているかを具体的に明らかにすることでありました。一般的に、アメリカのシンクタンクについては多大な影響力を有していると言われますが、その学術的解明を試みた研究は、実は本場アメリカにおいても極めて限られています。シンクタンクのような対象の場合、その影響力を客観的に実証することは困難ではないかといった方法論上の問題が強く意識され、政治学者らの間でこの分野の研究は活発に行われていません。
とはいえ、アメリカ政治における存在感の大きさを考えれば、シンクタンク研究は決して無意味ではなく、むしろその必要性はますます高まっていると言えます。そこで、本書では、より柔軟なアプローチを採用し、政策案の展開と保守系シンクタンクの関係に着目することで、「政策立案への関与を通じた短期的影響力」、「課題設定への関与を通じた中期的影響力」、「人材面での関与を通じた長期的影響力」という、三つの影響力の形態を抽出しました。
無論、研究分野としては未発達であるため、影響力をめぐる課題の他にも、アメリカのシンクタンク研究にはさまざまな課題が残されています。一例を挙げますと、長年海外においてもアメリカのシンクタンクは関心を集める対象でありますが、諸外国とアメリカのシンクタンクの歴史的関係は全くと言ってよいほど明らかにされておりません。このたびの受賞を大きな励みとして、今後は、本書での研究をさらに発展させるとともに、以上のような新たな課題に積極的に取り組んで参る所存です。 ・大平財団の皆様そして私を育ててくださった諸先輩方に厚く御礼申し上げます。
略歴
慶應義塾大学大学院法学研究科後期博士課程単位取得退学、2015年博士(法学)取得。在米日本大使館専門調査員、東京大学アメリカ太平洋地域研究センター助教、日本国際問題研究所研究員などを経て、2016年より帝京大学法学部講師。専門はアメリカ政治。主な著書に『ポスト・オバマのアメリカ』(共著、大学教育出版、2016年)、『ティーパーティ運動の研究』(共著、NTT出版、2012年)など。