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第35回 受賞作及び受賞者名

『新貿易立国論』
(文春新書 2018年)

大泉 啓一郎(おおいずみ・けいいちろう)
(亜細亜大学アジア研究所教授)

 このたびは名誉ある大平正芳記念賞特別賞を賜り、大変光 栄に存じます。
 本書が目指したのは、日本企業を主語にしたアジア経済論 でした。というのも、これまでのアジア経済論は、対象とし て日本自身を含めないことが多く、そこでの日本の扱いは、 企業活動や支援・協力を通じたアジア経済への影響という、 一方通行の議論が主となっていたからです。しかし、現実は、 日本がアジアのなかで唯一のリーダーという昭和時代は遠 い昔のことで、アジア新興国が台頭するなかで、新しい日本 の立ち位置が明確になるようなアジア経済論が求められる と考えたからです。
 そこで、「アジアと日本」ではなく、「アジアのなかの日本」 をキーワードに、世界に広がるサプライチェーンが日本とア ジアをどう変えたか、そのなかで日本企業はいかにたち振る 舞うべきかに焦点を当ててみようと思いました。また、10年 後に読み返して、日本は、何を乗り越え、乗り越えられなかっ たのかを評価できるように、現状分析だけでなく、苦言・提 言も数多くちりばめておきました。そうした野心もあって、 小さな本ですが、企画から完成まで5年の月日がかかってし まいました。しかし、その分、個人的には約30年間勤めた日 本総研という民間調査部で得た経験と知識の集大成となり、 ある種の「平成時代のアジア経済論」になったのでは、という 思いはあります。それが環太平洋連帯構想の発展に貢献する著作を表彰する大平正芳記念賞特別賞のひとつに選ばれた ことは、まさに感無量です。ありがとうございます。
 今年の4月からは亜細亜大学アジア研究所に籍を移し、研究 を続けることになりました。気持ちはすでに「令和時代のア ジア経済論」に向かっています。おそらく、アジア全体では「デ ジタル化」が、日本では「日本のなかのアジア」がキーワード になるだろうと感じております。引き続き、皆さまからのご 指導・ご支援を賜りますようお願い申し上げます。

略歴
1996年 京都府立大学農学部卒業
1998年 京都大学農学研究科修士課程修了
2012年 京都大学博士(地域研究)取得
主書:『老いてゆくアジア』(2007 年)中央公論新社(発展途上国研究奨励賞)、『消費するアジア』(2011 年)中央公論新社

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