『リサイクルと世界経済― 貿易と環境保護は両立できるか』
（中公新書 2018年）
小島 道一（こじま・みちかず）
（東アジア・アセアン経済研究センター シニア・エコノミスト）
大平正芳記念賞特別賞を頂き、大変光栄です。賞をいただ いた『リサイクルと世界経済』は、国際的に取り引きされてい る再生資源や中古品、輸入した国でのリサイクルやリユース について、1998年以降に進めてきた研究をコンパクトに紹介 したものです。本書の企画を立てた当初は、全く想定してい なかったのですが、2017年末から、廃プラスチックや古紙を 大量に輸入していた中国が輸入規制を強化し、再生資源の貿 易について注目が集まる中で、出版することができました。 経済活動がグローバル化する中、環境汚染につながらないよ うにしながら国際的に資源循環を進めることの重要性を広く 理解いただければと考えております。
この本は、アジア経済研究所に所属しさまざまな経験を積 ませていただいたからこそまとめることができたと考えてお ります。最初に配属されたアジア地域の経済予測を行う部署 では、アジア地域を俯瞰するような研究の重要性を感じる機 会となりました。研究所に入る前から考えていたアジア地域の環境問題に取り組む機会もいただき、多くの諸先輩や同僚 に助けていただきながら研究を進めることができました。 国内外の研究者との共同研究の中で学んだことも少なくあ りません。また、航空運賃の低下、インターネットの普及に よるコミュニケーション技術の発展がなければ、複数の国を 対象に現場を訪問し、実態を理解し、国境を越えた構造を考 える研究はできなかったと感じております。
国際的な資源循環というテーマについては、海外でも高 まっております。すでに、本書の韓国語訳も出版されました。 本書の出版後も、廃プラスチックの貿易に関して、バーゼル 条約の附属書が改定されるなど、さまざまな動きがありま す。この分野の研究を引き続き進め、日本だけでなく、海外 でも国際的な資源循環を考える参考資料となるような研究 成果を発表していきたいと考えております。
略歴
1965年東京生まれ。
1990年慶應義塾大学経済学部卒業。アジア経済研究所研究員。
1996年-1998年、アジア経済研究所海外派遣員（在バークレー）。
1997年 カリフォルニア大学バークレー校農業経済・資源経済学科 修士号取得。1998年にアジア経済研究所に帰任。
2015年4月 新領域研究センター 上席主任調査研究員
2018年3月 東アジアASEAN経済研究センター シニア・エコノミスト。
1999年-2018年 一橋大学学非常勤講師（半期）
2016年- 東京大学工学系研究科客員研究員。
